糸井 |
その手の話でもう一つ思い出したけど、
いくらでもあるねえ、この手の話って。
あのねえ、『憲兵とバラバラ死美人』。
って映画があったの。新東宝の映画で。 |
鈴木 |
えっ、もう1回言って。 |
糸井 |
『憲兵とバラバラ死美人』 |
鈴木 |
すげえタイトルだなあ。新東宝らしい。 |
糸井 |
どんな映画だったか忘れたけど・・・・ |
鈴木 |
だいたいそれは想像つくな。 |
糸井 |
うん。
で、強姦シーンがあったのよ。
レイプシーンが。
そこで、すっごいいけないことなんだけど、
すっごい興味があるわけ。
いけない興味ある、いけない興味ある、
っていう感じだったの。
それで、ものすごい振幅で
(憲兵が)襲いかかった時に、
全部は見えてなかったと思うけど、
こうなんて言うかねえ、おっぱいが
「むぎゅっ」ってなるんだよ。 |
鈴木 |
つぶれるんだ。 |
糸井 |
そう。
その「むぎゅっ」がねえ、もうたまらないのよ、
よくて嫌で!
あれはメシは食えたけど、
このことは誰にも黙っておこうと思った(笑)。 |
鈴木 |
へえ。『憲兵とバラバラ死美人』ね。 |
糸井 |
じゃあねー、もうひとつ『透明人間とハエ男』
っていうのもあるよ。
ハエ男だからいろーんなところを
ブンブン飛び回るの(笑)。エロ中心で。 |
鈴木 |
エロ絡むなー(笑)。 |
糸井 |
絡むねー。
コーヒーなんかも子供は飲んじゃいけません、
って言うじゃない。
その、「子供はしちゃいけません」っていうので、
大人と子供の区別をつけるものっていうのは
いったい何なんだろう。
ピーマンが大人と子供の境界線っていうのは
わかるけど(笑)。
慶一くんにとっては(ピーマンが)そうだよね。
チーズもそうだし・・・
ああ、“自然にしてたら採り入れたくないもの”
っていうのを一生採り入れなかったら、
一生童貞だよね、思えば。 |
鈴木 |
そのとおり。 |
糸井 |
性のイメージっていうのがない限り
童貞でいられる。
最初の性のイメージっていつだろう? |
鈴木 |
最初におっぱい触ったとき。
俺、最初におっぱい触ったときって
いまでも覚えているけど、18のとき。
それって遅いよね。 |
糸井 |
俺も18のとき。
おっぱい触ったのと、しちゃったのが同時だった! |
鈴木 |
私は別々。
(おっぱいって)何てやわらかいんだろう、で
その後、たしかてんぷらそばをとったんだよ。
あっ完全にそのときのことを思い出した!
それは、またまた2階の親父の部屋だ。
で、てんぷらそばをとったんだけど、
全部食えなかったよ。
最初におっぱい触った日は。
てんぷらかあ、また。 |
糸井 |
それは(相手の)許諾のもとに・・・ |
鈴木 |
許諾じゃないけど、友達で2人でしゃべってるうちに、
……“この一手”が出ないじゃない。 |
糸井 |
出ないねー。 |
鈴木 |
“この一手”が出なくて、
かなり血液が逆流してるっていうか・・・・
だから、その一手が出るまでの道のりたるや、
すごいよ。
ロング・アンド・ワインディングロード。 |
糸井 |
ひとごとながら、すごいと思う! |
鈴木 |
最初の“この一手”からさらに、
胸に行くまでに1時間くらいかかった(笑)。
それで、胸までで、こっちは飽和状態に達してだな、
そっか先には行けなかったの。 |
糸井 |
固まってた?(笑) |
鈴木 |
固まっちゃった!(笑)
そんで、てんぷらそばでもとりましょうか、
って話になって・・・ |
糸井 |
それは、一旦ひいたのね(笑)。 |
鈴木 |
ひいたの。
「何食いたい?」
みたいな話になって、
「てんぷらそばが食いたい」
みたいなことになったの。 |
糸井 |
要するに一刻も早く日常生活に戻りたいわけね。 |
鈴木 |
そうそう。
そうしないと、どこまで非日常に行ってしまうか
わかんないからさー。
通過儀礼的非日常にね。
抑えきれないものはあるし、
でも、そこまではな、っていうのもあるし。 |
糸井 |
でも、みんながみんな、
一生、手が前に出ない状態だったら、
人類は絶えて死んでるよね。 |
鈴木 |
死に絶えてるね。子孫繁栄せず。 |
糸井 |
だよね。
そこは誰も意識したことはないけど。
だから、“手が前に出ない”ってことの方が
生き物としては“悪”なんじゃないの? |
鈴木 |
生き物としては“悪”か・・・
でもさー、不思議なもんでさー、
手を出すことが悪だと思ってるんだよ、頭の中では。
頭の中での悪とDNA的に正しいことが
戦いあっているのかなあ。 |
糸井 |
不思議だねー。
自分というものの謎が立ち上がってくるねー。 |
鈴木 |
立ち上がってくるよー。
今だったら、そんなこと(手を出すこと)は
“チョイッ”なのかもしれないけど・・・ |
糸井 |
今だって、“チョイッ”ってやるコツを覚えただけで。 |
鈴木 |
そうねえ。口数とかね(笑)。 |
糸井 |
コツを覚えただけで、
そんなの毎日素振りしてないヤツに
野球の試合はできないからね。
バンドマンとか素振りにつぐ素振り、
試合につぐ試合で、
球が飛んできたらパッとバットが出る感じじゃない。
で、あれっとか空振りしたりすると、
ショックなわけよね。 |
鈴木 |
そう。空振りするとショックなんだよー。 |
糸井 |
それ、許されないんだよね。 |
鈴木 |
そんで、てんぷらそばを食いましょう、って言って
残した記憶があるなあ。
糸井さんもてんぷらだよね。
なんでてんぷらなんだろう?(笑)
てんぷらとスケベ、てんぷらとショック、
てんぷらと高揚、新東宝のタイトルにはならんねえ。 |
糸井 |
自分が生存していくことと、
自分がDNAを残すってことは
実際には矛盾してるのかもね。
つまり、(セックスは)小さな自殺なわけよ。 |
鈴木 |
極小の集団自殺だよ。
女性は月1回かもしれないけど
男の場合は若いときは、週何回も。 |
糸井 |
だって、カマキリなんかだったら、
そのままそこで成仏するわけだろう?
とか、蟻なんかすごいらしいよ。
そんときだけオスになるんだって。
蟻はそうじゃないときはメスなんだって。 |
鈴木 |
常にメスなの? |
糸井 |
うん。
で、生殖活動するときだけ、
羽が生えてオスになって空中高く飛んで行って、
交尾するらしいんだよ。 |
鈴木 |
蟻が羽をはやしているのってそういうことなの? |
糸井 |
うん、羽蟻だよ。
あれ、あんときだけの臨時のオスなんだってさ。
で、しかもその後でその羽は切取線がついてて
落ちるんだって。 |
鈴木 |
(笑)ほんとー?
それは、ずいぶんよくできてるねー。 |
糸井 |
すごいだろー?
それとか、とんぼも素敵だよ。
とんぼはねー、“副生殖器”っていうのが
あるんだって、おなかのあたりに。
そこが穴になってて、とんぼがつがってるところって
しっぽのところの先に、
メスの頭をつかまえるための
マジックハンドみたいなのがついてるわけよ。
あれで頭をつかまえて、つながるわけだけど、
メスのしっぽのところに生殖器があって、
それをオスの副生殖器のところに
それをつっこむんだって。
生殖器じゃなくて副生殖器に。
そこにあらかじめオスが仕込んでおいた精子が
副生殖器からメスの生殖器の中に入れるんだって。 |
鈴木 |
メインの生殖器はどこにあるの? |
糸井 |
メインの生殖器は最初に出した場所(笑)。
しっぽの先。
面白いだろ? |
鈴木 |
うん。 |
糸井 |
メスはそっからチューッと吸うんだけど、
吸う前に先に副生殖器の中には
ブラシが隠れているんだって。 |
鈴木 |
えっ!? |
糸井 |
ブラシ(笑)。
そのブラシがメスの生殖管の中に
ダーッと入っていって
前のたまごを出すんだって。
たまごというか精子を。
で、他のオスのヤツがいたら俺は承知しねえからな、
って、他のオスの精子を掻き出して、
自分の精子を入れるんだって。 |
鈴木 |
ふーん。
それに比べりゃ人間はねえ、
輪姦とかしてねえ・・・ |
糸井 |
してねえっつうの!(笑) |
鈴木 |
普通は嫌だと思うけど、まあ・・・・ |
糸井 |
うん。俺は嫌だけど(笑)。 |
武井 |
まあ、ブラシは出ないですけどね(笑)。 |
糸井 |
ブラシは出ない!(笑)
俺、昆虫の話は最近聞いたばかりなんだけど、
もう楽しくてしょうがない。
いっぱい、いい話あるよ。
女王蟻がたまごを産む権利を持ってるじゃない。
だから、女王蟻でありつづけるために、
ずーっとローヤルゼリーみたいな中にいるわけよ。
で、たまごから孵った幼虫に
蟻がえさをあげるときに、
あれはえさをあげているんじゃなくて、
つばをもらってるんだって、幼虫から。
「ありがとうございます! つばを」
って言って、ご褒美として
つばをくれた幼虫に対してごはんをあげてるんだって。
そのつばの中に、あるゆるメスの蟻が
たまごを産ませないようにするための
ホルモンが入ってるんだって。
で、幼虫がぺぺぺっとつばをやると、
えさを食べた蟻が不妊症になるんだって。 |
鈴木 |
そうやって女王の座を守ってるわけか。 |
糸井 |
唯一の女王っていうのを守るんだって。
で、その元々幼虫のつばっていうのは
どこにあるのかというと、
女王が出したつばが連鎖してリンクしてるんだって。 |
鈴木 |
うわー、すごいなー。
女王を頂点とするヒエラルキーが。 |
糸井 |
でも、一方で女王というのは不自由な存在で、
ただたまごを産む商売なんだよね。
毎日、ただたまごを産むのよね。 |
鈴木 |
退屈そう(笑)。
すごい役割分担。 |
糸井 |
だから、何て言ったらいいの。
“拷問としてのAV男優”みたいな(笑)。 |
鈴木 |
はっはっはっはっはっ。 |
糸井 |
要するに、自由って言葉がすごく好きなんだけど、
どんなものでも自由でないものはダメよ。
俺はAV男優になりたい、とか言うけど、
じゃあお前、ずっとやってろって言われて、
それ以外やるなよ、って言われたら、
どんなに血気盛んな若い連中でも、
いや、いいっす、って言って逃げるよね。 |
鈴木 |
幼虫はいいなあ。プロセスだから。 |
糸井 |
幼虫の立場っていうのもよくわかんないんですけどね。
昆虫の世界はSFのアイディアになるようなのが
いっぱいだよ。
だって、とんぼの強い弱いみたいなのがあるじゃない。
強いとんぼ、弱いとんぼがいるとすると、
そのほかに、
“別に僕は強くても弱くてもどっちでもいいとんぼ”
っていうのがいるんだよ。
そんで、強いとんぼ同士が戦っているそのすきに、
メスのところにすーっと行って、
子孫を残しちゃうんで、永遠に
“別に僕は強くても弱くてもどっちでもいいとんぼ”
は残っちゃうの(笑)。 |
鈴木 |
鮭もさー、海に戻らない鮭っていうのが
いるんだよね。
そんで、海から産卵に帰って来るじゃない。
そうすると横からぱっとかけちゃう。
こざかしいオス。 |
糸井 |
あのねえ、京都の方にいる有名な学者さんがいて、
コンピューターシュミレーションで
強い遺伝子と弱い遺伝子の他に、
どうでもいい遺伝子はどうして残るか、
っていうシュミレーションを
ずーっとコンピューターでやってるんだ。
何代にも渡って繰り返していくうちに、
(どうでもいいのが)残るんだって。
で、社会ってそういうものらしいんだよ。
その人はなんでそんな研究をはじめたかというと、
自分が落ちこぼれだったから(笑)。 |
鈴木 |
いいなあ、スタートが。 |
糸井 |
ナイスだろ?(笑)
弱肉強食とか、進化論とかっていうのをみると、
勝つことばかり考えるけど、
勝たないっていう生存戦略っていうのもあるんだよ。
ブツブツいいながら機嫌よくいる。 |
鈴木 |
うーん。目指すところだね。 |
糸井 |
目指すところだろ? ムーンライダーズの(笑)。
すごいなあ、そんな戦略の中に
ムーンライダーズはいたんだな(笑)。 |
鈴木 |
弱と強のはざまにね。
(つづく) |